魔法少女


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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ほのかな人影が、
月明かりの元でたたずみ、ぼくにそっと語りかけていた。

しかし、その言葉は風を震わすことは無く、
ぼくに伝わることもなかった。

ただ、銀光に微かに照らされた白い指先と、
ズタズタに切り裂かれた手首が、ぼくの姉を示しているような気がした……

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今朝は目覚めた時から雨の降りしきる一日だった。

ぼくは休暇を利用して数年ぶりに妹の元を訪れたることにした。

おそらく緑の花牧場の影響で、
家族と言うものを強く意識するようになっていたからだ。

都内にある大きな施設の病室に妹は国の援助で生活していた。

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久しぶりに会っては見たが、妹は相変わらず無反応だ。

以前より痩せた様に見えたが、
そもそも以前が何時だったのかさえ思い出せなかった。

妹は、この無機質で真っ白い壁を何年見続けて来たのだろうか……

特に会話を交わすこともなく、
ただベットの横で座っているだけだったが、

これからは定期的に妹のお見舞いに行こうと思った。

何故なら、
ぼくが、考えないようにしていた事柄の大半が家族のことであり、
その結果が、目の前で無機質に座っている、

たった一人のぼくの家族だからだ。

ふと、カサカサに干からびた妹の手が目についた。

震える手でそっと触れてみると温かい感触が伝わり、
まだ妹が生きているということに自然と涙がこぼれてきた……

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とめどなく流れていく涙は何時おさまるともなかったが、
微かに、力なく握り返して来た妹の指先の感触が一層ぼくの涙を誘った。

それでも、日も暮れ、月夜が頭上にかかげられる頃には、
涙もすっかり枯れ果て、面会時間の制約のあるぼくは施設を後にせねばならなかった。

梅雨明けも近いのか、すっかり雨も上がっている。

「もう新しい季節のはじまりか……」
誰にともなく呟き、雨上がりの夜道を見ていると、

ふと、初めて彼女と出会った日のことを思い出した。
たしか、あの日も雨上がりの路地を歩いていたのだった……

なんだか、ずいぶんと昔のことのように感じた。

特に立ち寄るとも連絡をしていた訳ではないが、
あの場末の飲み屋に寄ってみようと思った。

「元気でやっているだろうか……」

実はあの日、エミと別れて以来、彼女に何度か手紙を書いていた。

もちろん緑の花牧場のことも伝えていたし、彼女からも返事をもらっていた。

そんな手紙の中で彼女はこんな事を語っていた……

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お手紙ありがとうございます。

お察しの通り、かつて私は緑の花牧場の人たちと
家族として一時期を共に暮らしておりました。

ただ、本当の家族ではなかったのも
事実として述べておかなければならないでしょう。

かつて私自身が持ち得ていたある種の能力によって、
かりそめの家族を演じ……

ある日、
私は家族を見捨てたのです。

たとえ、それが本意でなかったにせよ、
最終的に選択したのは私であり、

私自身にも深い大きな傷を負わせたのです……

罪の傷の癒えない今の私には
彼らに会う資格など無いのかも知れません。

ただ、彼らが私のことを想ってて
くれた事は本当に嬉しい気持ちで一杯です……

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店にたどり着くと、
ママとエミが二人して出迎えてくれた。

突然訪れたぼくの痩せた身体を見て驚きの表情を見せていたが、

ぼくがもう大丈夫だと言うことを告げると、
エミは瞳を潤ませて笑みを浮かべ、ぼくの額に触れて、
そっと何かの呪文をそっと唱えた。

「エルテ、ソラル、ソー、クロース……」

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エミがどんな呪文を唱えたのかは分からないが、
恐らく彼女がぼくに見せた始めての笑顔ではなかろうか?

そんな彼女の表情の中に、
かつて見た姉の面影を感じ、何だか安心を感じた……

そして、何よりも……

彼女はリストバンドをしておらず、
手首の傷口もだいぶ薄れている様に見えた。

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店のママはおでんと煮込みを出すと、
「あんた随分と雰囲気が変わったね……」
と言い、読みかけの雑誌に視線を戻した。

もしかしたら、
このママこそ一番不思議な人なのかも知れないが……

今は考えるのはやめておこう……

この時、
ほんの思いつきではあったが、
ある提案を彼女たちに持ちかけると、

ぼくは電車の時間を理由に店を後にしたのだ……

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ぼくが、場末の飲み屋の彼女たちに持ちかけた提案とは、
梅雨も明け、夏真っ盛りになる頃、

ぼくが住んでいる家に遊びに来ないかと言うものだった……

思えば過去も未来も考えないようにしていたぼくにとって、
随分と思い切った提案の様に思えたが、

彼女たちは快諾してくれた……

時おり、
過去に対する後悔の念がぼくの影の中にしのびより、

どうしようも無いほどに激しく心を乱すことがあった。

そんな時には、
今までと同じ様に考えないようにすべく、呟くしかなかった……

ただ、
「考えない」とだけ呟くのでは無く、
今目の前に見えるものの中に存在する何かを探すようになった。

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それは、
ほんとうに些細な事である。

無事に家に帰る事ができて良かったとか、

今日も夜ご飯が食べれて良かったとか……

もっと言うと、
息を吸うことが出来て良かったとか……

そんな良かったと思えることをきちんと意識して呟くようになった。

この国で暮らす人にとって、
当たり前とも言える取るに足らない事なのかもしれないが、

何となく、ぼくの心の視野を広げ、

今まで見えなかった多くの事を気づかせてくれるのだ……



裏路地小劇場 魔法少女 完









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人の気持ちというものは、
どれ程うつろい安く多様性に満ち溢れているのだろうか?

ぼくのように考えないようにするしか、
生きる術を見いだせなかった人間にとっては理解し難いものもあるが、

可能であるならば、
自分自身の気持ちに制約をもたらさない方が良いのだろう……

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あれから、数ヶ月たった。

ぼくはあの緑の花牧場の近くにある町で住み込みで働ていた。

高齢者が多く、若い人のほとんどいないこの地域にとって、
期間限定とは言え、

外部から来たぼくの事を町の人は歓迎してくれたようだった。

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ある程度の思惑もあったが、
緑の花牧場の人たちとも時折交流があり作業を手伝う事があった。

この牧場には老夫婦に息子夫婦とその娘が住み、
あの時にあった女の子は息子夫婦の娘だったことになる。

また、少し離れたところには老夫婦の娘も暮らしていた。

ある意味、理想的な家族像を象徴しているのかも知れないが、
彼らにも忘れ難い影があった。

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この老夫婦にはかつて長女がいた。

時おり、はにかんだ様に笑う笑顔の特徴的な陽気な娘だ……

しかし、
彼女はある日突然家族に別れを告げていなくなった。

彼らはその理由については言わなかったが、
家族全員が悲嘆に暮れ、それを癒すが為にこの地へ越して来たのだ。

そして、
彼女は特異な星の下に生まれた娘だったと、

哀しみと、懐かしみを込めて語った……

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正直、もう帰って来ないのだろうと言う思いは強いのだが、
長女がいた証を残すために、

また万が一にも帰って来た時の為に、
看板にいなくなった長女の名を記しているのだ……

なんて言うことだろう……

こんな家族があったなんて……

この話を初めて聞いた時、
ぼくの中で失われたと思っていた過去の記憶が一気に吹出し、

何故彼らのように生きられなかったのかと自責の念に捕らわれた……

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それでも、
一生懸命働くことによって目の前にあるものだけを見るように努力し続けた。

やはり、
ぼくは意識して気持ちに制約をかけないと、
今この瞬間ですら生命活動を維持する事が出来ないようだった……

いいや、実際はどんなに制約をかけようとも、
思考はぼくの意思とは無関係にぼくに働きかけているのだ。

ぼくは単に、「考えない」と言う言葉で思考を埋め尽くし、
ごまかしているに過ぎないのだ……

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ぼくは疲弊し、
力なく微笑む毎日が続く様になり、随分と体重も軽くなったようだった。

そんな時、
町の人達はぼくの変わり様を心配し、

新しい環境になれないのだろうと気を使って少しの間ぼくに休暇をくれたのだ……


裏路地小劇場 魔法少女 第七幕  完
終幕につづく……


透き通った水色に覆われた風が彼女の乱れた髪をなびかせ、
ほんの一時の間だが緊張を和ませた……

これがぼくらのお使いの目的なのだろうか?

だとすると何故ぼくまでが、
エミと一緒に、ここに来なければ成らなかったのだろうか……

もちろん飲み代と引き換えにして自分の意志でここに来た事ではあるが……

そもそも、
彼女と、この緑の花牧場には一体どのような関係があるのだろう?

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ぼくの否定すべきあり得ようもない妄想に比べれば、
いくらでもこの状況を説明できるはずだ。

しかし、
ぼくの頭には他の事を考える余裕がなかったのだ。

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牧場の入り口近くの木陰でしばらく休んでいるとエミが目を覚ました。

ぼく自身どうやっても気持ちの整理がつかなかったが、
エミに聞かずにはいられなかった。

「あれは、きみのことじゃないのか?」

看板に書かれた文字を見ながら問いかけたが、
心の中では意識的に否定し続けるセリフだった……

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エミは小さく首を傾げると、
おぼつかない足取りで牧場の敷地の中に入り込んだ。

草が膝下をくすぐるように風の音色に混じって、ぼくら二人を招きいれた……

少し進んで立ち止ると、
遠くの方で小さな女の子が草原で座っているのを見つけた。

ここで暮らしている娘かもしれないし、

もしかしたら、この娘が、えみ、なのかも知れない……

二人の視線が触れあうと、
女の子は満面の笑みを浮かべて彼女を迎えた。

「だーれ?」いかにも幼い女の子らしい、
間延びしたような可愛らしい問いかけだった。

その瞬間、エミは女の子の表情に何かを感じ取ったかの様に
口元を手のひらで覆い、瞳を潤ませたのだ……

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「パパとママは?」一時の間を置いて、
しゃがみ込みながらエミがそっと尋ねた。

「おうちなのよ、だからここであそんでるの……」

「パパの名前は……」
最後の方は良く聞き取れなかったが、女の子はエミに

「何でパパのなまえしってるの?お姉ちゃんはえみちゃんなの?」
と訪ねると、

エミの顔を不思議そうに見つめ、そのまま駆けて行ってしまった。

この二人の会話には一体どんな意味があるのだろうか……

女の子の背中を見送りながらエミに近寄るとそっと尋ねた。
「どうする?」

彼女は思いつめたように俯き、
手首のリストバンドを見つめると牧場に背を向けて歩き始めた。

まるで、
その存在が幻であったかの様に彼女の後ろ姿が霞んで見えた……

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その後、ぼくらは一言も交わすことなくそれぞれが帰路についた。

本当のところはどうなのだろう、
あの牧場はエミが帰るべき場所なのだろうか?

答えの見えない疑問が止めどなく沸き上がってくるが、
これ以上の深入りは出来ないと考えた。

恐らく……

次にすれ違うときはただの他人らしく、
お互い言葉を交わすことも無いだろう……

そんな思いを漠然と感じていた……


裏路地小劇場 魔法少女 第六幕 完
次回 第七幕へつづく……




色褪せた、
古くにじみかかった映像だった。

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ぼくは路地の電信柱に隠れて釣竿を構えた。

糸の先にはたっぷりと湿り気を帯びた両生類の柔らかい物体がくくりつけてある。

何度となく味わった、
この他愛もない大義を達成しようとするこの瞬間の甘美なまでの緊張感……

十秒、五秒……

カウントダウンが進むにつれて一層心臓の高鳴りが強く鳴り響く……

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いまだ!

カエルが学校帰りの姉の顔めがけて空を飛んだ……

瞬間、
雲をも切り裂く鋭利な高周波音がビリビリと大気を震わせた。

刺激の強い媚薬を味わうかの様に唇を舌で撫でながら成功を確信した。

おさまる事を知らない姉の絶叫音は、
この些細なプロジェクトを成功させたぼくへの賞賛の声のようだった……

しかし、
次の瞬間、カエルは恐ろしい牙を剥き、天敵たる蛇へと変貌した。

貪欲な爬虫類の眼孔がぼくを睨み付け噛みつこうと追いかけて来た。

まるで現実ばなれした場面を不思議に思いはしたが、

幾度となく味わい、
脳内に強く印象付けられた甘美とも言える感覚がそれを遥かに上回った。

何時もの日常景色のほんのひと場面である……

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うっすらともやに覆われた朝だった。

昨夜はどれくらい眠れただろうか……

夢のせいで前頭骨と頭頂骨の隙間にそって鈍い痛みが走り行き、
二人の足音が、一層痛みを冗長させた。

頭を抱え、
舗装されていない道を歩きながらエミの後ろ姿を目で覆う……

ぼくは彼女に対して
、どう接して良いか分からなかった。

本来であれば、そんな事を考えるまでもなく
全てから目を背ければ良いだけの事だった……

しかし、
エミの息遣いが、か細い身のこなしが気になって仕方がなかった。

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どれくらい歩いて来ただろうか、今まで歩いて来た道の印象は大分薄れ、
景色は一面が緑色に染まり始め、輝く草の絨毯が遠くの方まで風に揺れていた。

あともう少しすれば立派な草原になるのだろうか、
そんな清廉とした景色を強調するように丸太で作られた牧場の看板が目についた。

鳥の鳴き声が、風の音色の中でコントラストをかもし出す……

ようやく緑の花牧場にたどり着いたという達成感を感じながら、
おもむろに看板の文字を見つめた。

僅かな期間の旅ではあったが、
これで全てが終わるのだと言う感覚が一瞬沸き起こった……

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しかし、
そこに形造られた言葉が何を意味しているのか理解するのに少し時間がかかった。

そして、
その意味を悟った瞬間には、
まるで一瞬にして身体中の血液が気化してしまったかの様に発熱し、

カラカラに渇いた身体が水分を欲し震えを誘った……

何故なら、
そこには考えただけでも畏怖すべき、
絶望との背中合わせの言葉が綴られていたからだ。

「えみ……」

無意識に出た読み言葉を最後まで続ける事ができなかった。

「……、お帰りなさい……」
エミが震える唇でぼくの言葉の後を続けた。

まさか、そんな事がある訳がない、自分の中で形作られた
あるストーリをぼくは否定した。
 
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エミ自身、一言も漏らさずに、看板に釘付けとなった。

えみ姉さん お帰りなさい
そんな言葉が綴られていた……

そして、
あまりにも精神的なストレスが大きすぎたのか、彼女は気を失った。


裏路地小劇場 魔法少女 第五幕 完
次回 第六幕へつづく……




ときおり風が吹き抜けるが車道には何も遮るものがなく

遥か遠くの方まで緩やかに風はそよぎ行き、
午後も大分過ぎた太陽の注ぐ時間帯であるにもかかわらず、

真夜中の如く静寂に満ち溢れていた……

何時廃線になってもおかしくないほど人気のないバス停だった。

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ぼくらは始終沈黙を守り、
バスに乗っている時もお互い別々の座席に座った為か

会話を交わすことも無く流れ行く車窓に視線を奪われていた……

それでも時間は流れ行きM別市内にある小さな町でバスを降りると、
もう日も大分暮れかけていていた……

この辺りはk之舞鉱山と呼ばれる、
かつては全国でも有数の産金量を誇り、

多くの人たちで賑わった鉱山の街であったらしいが、
今は見る影もない……

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しかし、
近年かつての在りし日の思い出にかられた人々の手によって
高齢者ばかりではあるが少しずつ人口も増えつつあり、

ぼくたちの泊まる宿もかつての木造建ての駅舎を
改築し宿にしたものだった。

ここは、そんな一旦失われたものを
一生懸命取り戻そうとする人たちの町の様だった。

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そしてママの計らいなのだろうか、
ぼくと彼女は一緒の部屋で、
もしかしたら宿の人からは夫婦なんかに思われているのかも知れない……

しかし男と女とは言え、
ぼくは既に男女関係云々などと言う感情は無かったし、
彼女自身それほど気にしているようでもなかった……

しかも温泉につかり浴衣姿で部屋で休んでいても、
向き合いながら夕食を二人で取っていても始終無言だった……

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きっと、このまま時間が過ぎ去れば、
お互いの記憶は過去の闇の中に消え去り、

仮に再び出会ったとしても言葉を交わすこともしない、
ただの他人同士に戻るだけだったろう……

ところが、
思いがけずに沈黙は破られるのである。

それは静寂とした空気が立ち込めるなか、
行き場を失った風を窓の外に解き放とうと、

そっとカーテンを手繰り寄せてガラス戸を引いた時だった。

外界とをつなぐ僅かな隙間から風が舞い込むのと同時に、
降り注ぐ銀色の月明かりが部屋の中に射し込み、ぼくを照らした。

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風になびいた髪が乱れエミの表情が揺らぐと
激しく血流が上昇したかの様に緊張感が漂った。

唇を微かに震わせながら彼女はぼくの額を見つめた。

エミには何かが見えたようだった。

そしてエミは震える指先でそっとぼくの額に触れたのだ……

「どうしました……」
指先の温かい感触が心の奥底まで辿り着いたような気がした。

エミは「ううん……」と一言呟き、
何も語らずに目尻に小さな雫を輝かせた……

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電灯の沈んだ狭い空間の中は、二人の呼吸音だけが微かに漂う……

ぼくは布団の中で眠りにつこうとしたが、
一向に眠ることができなかった。

どうしてもエミのさっきの表情が思い出されて仕方がなかった。

どんなに、
過去を断ち切ろうとしても彼女のあの表情が忘れられない……

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あの時のエミの涙は一体何を意味していたのだろうか……

自分の額をエミがしたのと同じように指先で触れてみた。

なんだろうか、何か懐かしい感覚が沸き起こった。

それは、もう決して触れることの出来ない、
ぼくの気持ちを激しく揺さぶりをかけるもの……

ぼくの額に触れた彼女の指先の感触が
辛く切ない古い記憶を呼び起こした。

姉がいなくなる少し前だったと思う……

ぼくの額に優しくキスをした姉は寂しそうに微笑んだのだ……

まさか……

彼女がかつてのぼくの姉だなんてあり得ようはない……

ただ……

隣で寝息を立てるエミの姿が、
ぼくを一層落ち着かない気持ちにさせた……


裏路地小劇場 魔法少女 第四幕 完
次回 第五幕へ続く……








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