それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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「お客さん。今日は一人なの?」
場末の酒場のママに相応しい肉感的で陽気そうな雰囲気の女性だ。
厚い化粧で良く分からないが結構年が行っているのかも知れない。

私はママに軽く会釈して見せるとポケットから医者の紹介状を取り出して聞いた。
「この辺に目医者があるらしいのですが分かりますか?」
ぶしつけとは思ったが聞かずにはいられなかった。

「目医者?この辺にあったかしら……、
でも書いてある住所はこの辺りだわねぇ……、見つからなかった?」
私はママの問いかけに頷いて水割りをすすった。

「目医者があったとしてもこんな夜遅くじゃやってないでしょ。
あら、でも深夜営業って書いてあるわね。お客さん目が悪いの?はいアーン……」
おつまみのスルメを私に食べさせるとママは自分のグラスを飲み干した。
私が店に来る前からだろうか、既に大分酔っているみたいだ・・・・・・

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「目が悪い訳では無いのですが……」
私はグラスを握りしめ震える拳を一瞥すると
自分が抱えている不安な現況についてママに話した。

「実は私はあることに危機感を抱いているのです」
一瞬私が何を言ったのか理解できなかったのか、少し間を置いてママは答えた。
「危機感?それと目医者が関係あるの?」

「ええ、話は既に複雑怪異なまでにねじくれてしまっているのですが、
そもそも私が目医者に行かねばならなくなったのはこの危機感が原因なのです。

いいですか?この世はテレビの脚色された。いいや捏造されたと言っても良いでしょう。
そんな虚構の情報に踊らされ、支配されているのです。

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そんな事を考えると毎日が不安で不安で仕方がないのです……」

ママは少々面食らいながらも
熱心に私の話を聞きながら水割りのおかわり作ってくれた。

「私の妻や子はテレビに出ている架空とも言える不確かな
登場人物が発する脚色された情報を盲信し、

やれかっこいいだの、やれこの人は凄く家庭的だのと個人を絶賛し、
あげくの果てには食べたこともないのにテレビで料理を作っている姿を
見ただけで料理の才能があるのだと褒め称える。

また、どんなに捏造や嘘が発覚しようとも愚かにもそれを聞き流し、
また別の情報に対して盲信し続けるのです。
あたかもカルト教団に洗脳された狂信者のように……」

私の前頭葉はかなり発熱していたので
一端言葉を区切りグラスで冷やさなければならなかった。

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ママはおしぼりを私に手渡して言った。
「確かにテレビの情報は全部が全部真実では無いのだと思うけど
テレビなんだからそんなに真剣にならなくても。嫌なら見なければ良いわけだし」

「確かにその通りなんです。実際私もテレビは真実をストレートには
発していないのを理解しているので、見ない番組も多いのです。

しかし私の家族に限らず、大多数の人はそう言いながらも知らずの内に
多大な影響を受けてしまっているのです。

その影響力を知るからこそ大企業は莫大な予算を
テレビコマーシャルにつぎ込むのです。

企業が効果も無いものに対して
何十、何百億円ものスポンサー料を支払うでしょうか?

商品がどんなに不味かったとしても、あるいはつまらなかったとしても
テレビの情報によって人間の判断基準は狂わされ、美味しくも無い食べ物を
美味しいと思い込んだり、つまらないドラマを面白いと感じてしまったり、
必要の無いものが必要に感じてしまうのです。

私は一般の人々が、
取り分け私の家族がそうなるのを見るのが非常に辛いのです」

私の熱弁にママはしばらく言葉を失い、ようやくの思いで口を開いた。
「まあ………、テレビに対してそこまで考えた事は無かったわ。

でもそんなに気にする必要があるのかしら?
お客さん物凄く疲れた顔してるわ……」

ママは私の背中にスリよると肩を揉み始めた。
指先が肉の奥まで沈んでゆくと頭の芯までジンジンと響き渡るようだ。

「テレビの話も良いけど今は気楽に飲んで。どう?私うまいでしょう。
あまり緊張しないで、深く考えずに目の前のものを受け入れて……」

そう言ってママはスカートをたくし上げてストッキングに覆われた足を絡ませてくると、
細い指先を私の身体を舐めるように這いずりまわせたのだ・・・・・・

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裏路地小劇場 場末のひと 第二幕 完
第三幕へつづく……




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