裏路地小劇場 そらへ 第二幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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今までテレビや写真と言った分厚いフィルター越しでしか
見たことの無かった地球。

地球とは青い色をした美しい星だとばかり思っていたが、
こんなにも赤茶けたモノだったとは思いもしなかった。

青かった地球はいったい何時失われたのだろうか……

 20130807082140d32.jpg

月の世界にいても空腹や喉の乾きは感じるものである。
そんな時どうするのかと言うと、
月に無数に廃棄された古びた電話ボックスから出前を注文するのである。

ボックス内には手垢まみれの電話帳が置いてあるので
出前をしてくれる店を探すのも簡単だし、
どういう訳か電話料金も、出前のお金も全て無料だった。

ちなみにポケットの中の携帯電話を手にとって見たが
地球外と言うこともあり圏外となっている。

ぼくは無惨に遺棄された墓石の様に立ち並ぶ数え切れない数の
錆び付き古びた電話ボックスたちを憐れむかの様に眺めていた。

 box111.jpg

「おまちどうさま」
月の地平線の向こうから白い白衣を着た出前持ちが自転車で現れた。

出前持ちの顔は何処かで見た様な気がしたが、
顔が近づくほどに鉛筆で塗りつぶされた様に不明確な表情になり
彼が誰だったのか思い出す事が出来なかった。

彼は金属の箱からワンタンめんとチャーハンを取り出してぼくに手渡した。
テーブルも何も無いので地面に直置きだが気になる事はなかった。

出前持ちは何時もの様にバイオリンを取り出すと
ぼくの横で寂しげな曲を演奏し始めた。

ぼくは音楽に対しては全くの素人だが彼の演奏を聞いていると
出前持ちにしておくのがもったいないと思える腕前だった。

そして宇宙軒のラーメンは何となく懐かしい感じのする古い醤油ラーメンの味で、
チャーハンは焼豚ではなくハムだったが味はぼく好みのしっかりした味付けだった。

demae_20140101105924e31.jpg

顔の分からない出前持ちが一体どこから来るのだろうかと言う
現実的な問題はぼくには余り意味をなさなかった。
それよりも過去も未来もなくただ現在を生きているだけの自分が
特異な体験を目の当たりにしていると言う事実のみがこの上なく新鮮であり、
ある意味重要な事でもあった。

そんな非日常的場面に置いて、ぼくが出前持ちの男に自転車を借りようと言う行動に
出たのはある意味必然的な事なのかもしれない。

彼はこう言った。
「いいですとも!自転車をお貸ししましょう!何なら返さなくても良いですよ。
私はここでずっとバイオリンを弾き続けますから、そう、死ぬまで引き続けますとも……」


裏路地小劇場 そらへ 第二幕 完
第三幕へ続く……



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