裏路地小劇場 場末のひと 第一幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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この雑多な歓楽街の中で目医者などあるものだろうか。
見えるのは極彩色に彩られた派手な飲み屋や風俗店の看板ばかりだ。

私は行き交う人々には目もくれず、
繁華街を抜け人通りのまばらな裏路地に入り込んで再び目医者の看板を探した。

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酒と汚物にまみれた薄暗い路地が立ち尽くす女達の色香と嘲笑混じりの笑み、
そして煙草の煙に霞む……

私は何とかしてこの不穏な空気を掻き分けて目的の目医者を
探せないものかと必死になった。

しかし今日も冷たい夜風が頬を叩くだけで何も得る事が出来なかった。
「誰かに踊らされているのだろうか?」無意識に自虐的な呟きが漏れた。
私は腕時計をチラリと見るとまだ終電まで少し時間があるのを確認した。

この裏路地を少し行った所にいかにも場末の飲み屋と言った感じの
中村酒店と言う店の看板が目についた。

私はハァっとため息を吐くと、
ここ数日試みていた目医者探索の最終日の
締めくくりとして一杯やって行こうと考えた。

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店の中はカウンターのみで
六、七人も入れば席は埋まってしまいそうな小さな店で、
奥の壁一面にも所せましと色とりどりな種類の酒瓶が並べられている。

いかにも場末の酒場といったある種独特な雰囲気を感じさせる店だった。
私はグラスを片手にとると水割りを口に含み大きくため息を吐いたのだった……

そもそも私個人としては目医者にかかる必要性があるとは
それほど感じている訳ではなかった。

それでも、そうせざる得ない理由があったのだ。
あれは、そう……

最初は不眠と不安から心療内科にかかっていたのだが、
どんな治療を施そうとも症状は一進一退を繰り返し、
どちらかと言うと悪くなる一方だった。

そうなってくると医者は色々な理由をつけては専門医を紹介し始めた。
いわゆるさじを投げるというやつだろう。

それが二度、三度、更に果てしなく繰り返されていくと、
一体今までどれだけ紹介状を受け取ったのか分からなくなってくる。

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そうなると当初の目論見から大幅に外れて行き内科や泌尿器科等を経由し
何時しか眼科を紹介される羽目になった。

正直なところ紹介されるのが整形外科だろうと
産婦人科だろうとそれほど気にすることも無かったかもしれない。

私としてはとにかくこの不安な心のくすぶりを聞いて欲しかったのだ。

しかし今回紹介された目医者は深夜営業で電話は何時もつながらず、
場所も書かれている住所を目指しこの街に訪れてみても
痕跡すら発見できないでいたのだ……


裏路地小劇場 場末のひと 第一幕 完
第二幕につづく








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