裏路地小劇場 場末のひと 第十幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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 鐘の音が鳴りやんだようだが、
静寂が訪れた事に気づくのに少し時間がかかった。

身体が自分のものではないかのように激しく震えていたからだ。

しかも激しい揺さぶりによって、
今まで保たれていた心のバランスが著しく崩れさり、
思考の奥深くに刻み込まれている不安定な精神状態を強く呼び起こした。

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途端に私の前進的な正の意識が否定され始めた。

ここにいることが、ここに来たことが、
本当に正しかったのか微かな疑問を感じた。

いったん疑問を感じると、それは少しずつ膨れ上がり、

今まで何度か引き返す機会があったにもかかわらず
何故ここまで来てしまったのだろうか?

本当にこんな所まで来てしまい
良かったのだろうか?

と自問自答が始まった……

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骨董屋は大きくため息を吐くとカルテを脇に置いて小さな飾り棚から
透明なカーブを描くガラス製の器を取り出した。

そして何かの実験をするかのようにガラス瓶を雪だるま状に重ねて
アルコールランプで暖め始めた。

「これはサイフォンです。コーヒーを入れる道具です」

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私の恐怖心を伴った震えとは裏腹に
骨董屋は落ち着いた仕草でコーヒーを作り始めた……

私はこれからどうなるのか聞きたくて仕方がなかった。
彼は一体私に何をしようと言うのだろうか……

こうして待っている間にも
負の感覚がじわじわと私を蝕んでいった……

骨董屋はそんな私の気持ちを察したかのように笑みを浮かべながら
カップにコーヒーを注いだ。

「まずはコーヒーで一息いれましょう。
私としては砂糖を入れずにブラックで飲むのをお薦めします……」

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骨董屋は上目使いでコーヒーを啜る私を観察するように見つめた。

私は震える手でカップを皿に置くと
心なし震えがおさまる気配を感じた……

次第に緊張がほぐれて行く……

それどころか暖かい空気に包まれているためか
非常に眠くなって来た。

何かおかしい……

私は自分自身の感情の大きな変化に違和感を感じた。

薬でも盛られたのではないかと思った……

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「何か少し変……」言いかけた言葉が途切れ、
無意識に大きなあくびが吐き出されるとまぶたが重くなった……

骨董屋はそんな私を見つめながら「大丈夫ですよ……」と小さく呟き、
頭を左右に振って大きく息を吐いた。

まどろみの中で背後にある扉が開く音が聞こえた。

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それは審判の下った私を処刑するための黄泉への入口なのかも知れない……


裏路地小劇場 場末のひと 第十幕 完
終幕へつづく……






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