裏路地小劇場 魔法少女 第一幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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月明かりの輝く夜だった……

ぼくが彼女に出会ったのは、
ある意味運命だったのかもしれない……

何故なら、
お互い特異な環境下を生き抜いて来た者であり、

出会ったのも、たまたま引き寄せられるように入った、
このうらぶられた場末の飲み屋だったからだ……

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その日は週末で、ぼくは仕事を終えると
何時来るとも分からないバスを雨の降り仕切る中待っていた。

仕事が終わったという充実感は多少はあるものの、
これから週末に向けて何か予定があるわけでも、
やりたい事があるわけでも無かった……

どちらかと言うと先のことは考えない様にしていた。

それが明日のことであろうと、
半日先のことであろうと収入を得て生活をする為の
必要最低限以外のことは……

だから、考えるのは目の前にある事柄に対してだけだ。

当然過去の記憶も
振り返って思い出したりしないように注意していた。

それが、ぼくがかろうじでこの世界を生き抜く為の
唯一の手段なのである……

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バスの座席から雨に濡れた夜の景色を眺めても何の感慨も持たない……

僅かにでも、思考がぼくの意思に背いて、そのそぶりを見せようものなら、

ぼくは独り言をつぶやいて、それを阻止する。

「何も考えない、何も考えない……」

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そして何時しかバスは終点に到着し
黒い雨がぱちぱちと降りしきる夜のカーテンの中へ躍り出た……

この駅は仕事の現場への最寄り駅で、
たまたま数日間通っただけの駅だった。

だからなのか、
ほんの思いつきで少し歩いてみる気になった。

都心の賑やかさは無いが、ぽつぽつと店の明かりが見えた。

寂れた商店街に入り込み、
黒い水たまりのような路地を幾つか抜けて行った。

すると、仄かに香る灯火が見えはじめ、
ずいぶんと油で薄汚れた古い定食屋を見つけた。

入り口に備え付けられていた料理のお品書きを見るために立ち止まると、
おもむろに店の暖簾を潜ったのだ……

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「レバニラ炒め定食……」
青白い蛍光灯のチラつく薄暗い店の中で
注文を取りに来たおばさんのよたついた後姿を見送った。

ぼくは家族もいない独り身なので時折外食をする事があった。

当然外食するのはお金もかかる事なのだが、
多分昔を無意識に懐かしんで店に入るのかもしれない。

あれは、もう何十年も前の事だろうか……

かつて、ぼくには両親と姉と妹がいた。

しかし、姉の失踪後に家族は離散した。
いいや崩壊したと言ってもいいだろう……

しかも失踪した姉は実は本当の姉ではなかった。

いいや……
そもそも人間ですら無かったのだ。

我々の家族と偽り、かけがえの無い楽しい思い出だけを残し、
ある日いなくなった。

姉は普通の人間には到底持ち得ない
ある種の特殊な能力を持っていたのだ。

瞬間的に人間を別の場所へと移動させたり、
空から雷と嵐を巻き起こし火事を消し飛ばしたり……

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まさか、そんな事が本当にあるなんて姉が失踪するその日まで
少しも気づかなかった……

彼女は我々の前で能力を使ったが為に元の世界に
帰らなくてはならなくなったのだ。

以来、母親は精神に異常を来たし、
介護に疲れた父親は自殺すると、ぼくと妹は施設に預けられた……

施設では誰もお互いの事など干渉もしないし、
話す必要も無かったので気が楽ではあったが、
楽しい思い出も、辛い思い出も無かったのが正直な所だろうか……

そのうち、ぼくは深い殻の中に閉じこもった。
それが原因で妹も心に病を抱え現在も入院中だ。

母親も死んだ様なことを聞いた……

ぼくが出来ることは、
過去も未来も見ないで目の前に存在するものだけを、
淡々と処理する事で何とか生命活動を営んでいる様な気になった……

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活きていると言うよりは、
ここにあると言った方が相応しいのかも知れない……

それからは働き、食べ、寝るだけの生活が続いた。

それでも、
かつて家族で外食した時の名残なのか、

決して高くない賃金をふるって店に入り
僅かなヒトトキを過ごすのである……

こうして味わいの無い食事をしていると何もかもが無色透明の
幻であったのではないかと思うとことがあるが、

目の前にあるこの瞬間だけは唯一の現実なのだろう……


裏路地小劇場 魔法少女 第一幕 完
次回 第二幕へ続く……















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