裏路地小劇場 魔法少女 第二幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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夕食を食べた後はすっかり雨も上がり、
真ん丸なお月さまが黒い雲の隙間から顔を覗かせていた……

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なんとなく気分が良いためか少し夜道を散歩する気になった。

「だいぶ寒さも和らいできたかな……」
他愛も無い事を呟きながら路地の奥深くへと進み、
裏路地のかもし出す狭く奇妙な雰囲気を感じていた。

そんな時、
この人通りも殆ど無い裏路地で場末の飲み屋を見つけたのだ。

ただ、
たまに酒を飲むこともあったが店に入ることは殆ど無かった。

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野良ねこが足元をじゃれ付く……

なんとなく立ち尽くしたまま看板に見とれていると、

店から女の人が出てきて、
ぼくを一目見るなり飛びつくように腕にしがみついてきた……

その表情には微かな驚きが含まれているように見えたが、

次の瞬間には満面の笑みを浮かべると
「今日は天気が悪く客足が悪いのよ」と呟きながら店の中に誘った。

躊躇するぼくの腕を引きながら、

「何しているのよ!サービスするからお入りなさいよ!」
と叫び、店の女性は半ば強引にぼくを店の中に連れ込んだのだ……

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まあ一杯位なら良いだろうと思いハイボールを注文した。

店の雰囲気は
スナックと大衆酒場を足した様な感じで狭く、

カウンターの奥には四角いおでん鍋がグツグツと煮え、
思いがけずに美味しそうな良い香りがした。

「お客さん何食べる?」
ぼくを店に引きずり込んだ女性がこの店のママだった。
彼女はぼくに了解もとらずにおでんのネタを適当に皿に盛った。

「あの、飲み物だけで……」
「いいのよ。サービス。無理やり店に入れたから、エミちゃん。
煮込みあったでしょ。あれ、出して……」

その時、
カウンターの奥から煮込みの入った器を運んで来たのがエミだった。

これが彼女との初めての出会いだった……

彼女はぼくと同じ様に何処か表情に影があった……
ただ、不思議な魅力が彼女にはある様な気がしてならなかった。

彼女は一言も喋らずに器をトンッと置くと、
ぼくを見もせずにカウンターの奥に戻って行った。

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そんな扱いを気にする訳では無かったが、
ぼくの視線は何故か自然とエミの痩せた後姿に向けられた……

微かだが何処かであったことがあると感じたからだ。
そう、随分昔だ……

もう思い出せないほど昔なのかも知れない……

「気に入った?」

彼女を見つめるぼくの視線に気づいたママは呟きながら隣に座ると、
「あの子訳ありなのよ。仲良くしてあげて……」とささやいた。

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このママは見も知らずのぼくにまるで、
自分の娘でも紹介するように言うものだから戸惑わずにはいられなかった。

「ちょっと待っててね……」
ママはそう言うとぼくの肩をポンっと叩きエミを呼びに言った。

おでんといい、煮込みといい、
少しお節介がすぎる気がして成らなかった。

何時ものぼくならば、即座に席を立っただろう……
しかし、それをさせない何かがあるような気がして成らなかった。

そうこうするうちにエミはママに説得されたのか
カウンター越しにぼくの目の前に立つと俯いて小さく挨拶した。

今気づいたが両腕のリストバンドの端っこからリストカットした様な
惨たらしい傷跡がはみ出ていた。確かに彼女は訳ありな様だった……

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「仕事帰りですか……?」消え入りそうな声でエミが囁いた。
視線は伏せがちで、ぼくのことをまともに見ようとしていない様だった。

ぼくは無言で小さく頷くとグラスのハイボールを飲み干した。

「エミちゃん。お客さんにおかわりね……」
ママは雑誌を観ながらエミに指示した。

それから、どんな会話をしただろうか?
会話らしい会話なんてしなかったのかも知れないが、
ぼくは飲み続けすっかり酔ってしまった。

グラスを受け取るときのエミの指先の冷たい感触だけが残り、
何時しか意識は暗転した。

そして、気づいた時には全く知らない部屋の中だった……

裏路地小劇場 魔法少女 第二幕 完
第三幕へつづく・・・・・・




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