裏路地小劇場 魔法少女 第四幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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ときおり風が吹き抜けるが車道には何も遮るものがなく

遥か遠くの方まで緩やかに風はそよぎ行き、
午後も大分過ぎた太陽の注ぐ時間帯であるにもかかわらず、

真夜中の如く静寂に満ち溢れていた……

何時廃線になってもおかしくないほど人気のないバス停だった。

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ぼくらは始終沈黙を守り、
バスに乗っている時もお互い別々の座席に座った為か

会話を交わすことも無く流れ行く車窓に視線を奪われていた……

それでも時間は流れ行きM別市内にある小さな町でバスを降りると、
もう日も大分暮れかけていていた……

この辺りはk之舞鉱山と呼ばれる、
かつては全国でも有数の産金量を誇り、

多くの人たちで賑わった鉱山の街であったらしいが、
今は見る影もない……

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しかし、
近年かつての在りし日の思い出にかられた人々の手によって
高齢者ばかりではあるが少しずつ人口も増えつつあり、

ぼくたちの泊まる宿もかつての木造建ての駅舎を
改築し宿にしたものだった。

ここは、そんな一旦失われたものを
一生懸命取り戻そうとする人たちの町の様だった。

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そしてママの計らいなのだろうか、
ぼくと彼女は一緒の部屋で、
もしかしたら宿の人からは夫婦なんかに思われているのかも知れない……

しかし男と女とは言え、
ぼくは既に男女関係云々などと言う感情は無かったし、
彼女自身それほど気にしているようでもなかった……

しかも温泉につかり浴衣姿で部屋で休んでいても、
向き合いながら夕食を二人で取っていても始終無言だった……

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きっと、このまま時間が過ぎ去れば、
お互いの記憶は過去の闇の中に消え去り、

仮に再び出会ったとしても言葉を交わすこともしない、
ただの他人同士に戻るだけだったろう……

ところが、
思いがけずに沈黙は破られるのである。

それは静寂とした空気が立ち込めるなか、
行き場を失った風を窓の外に解き放とうと、

そっとカーテンを手繰り寄せてガラス戸を引いた時だった。

外界とをつなぐ僅かな隙間から風が舞い込むのと同時に、
降り注ぐ銀色の月明かりが部屋の中に射し込み、ぼくを照らした。

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風になびいた髪が乱れエミの表情が揺らぐと
激しく血流が上昇したかの様に緊張感が漂った。

唇を微かに震わせながら彼女はぼくの額を見つめた。

エミには何かが見えたようだった。

そしてエミは震える指先でそっとぼくの額に触れたのだ……

「どうしました……」
指先の温かい感触が心の奥底まで辿り着いたような気がした。

エミは「ううん……」と一言呟き、
何も語らずに目尻に小さな雫を輝かせた……

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電灯の沈んだ狭い空間の中は、二人の呼吸音だけが微かに漂う……

ぼくは布団の中で眠りにつこうとしたが、
一向に眠ることができなかった。

どうしてもエミのさっきの表情が思い出されて仕方がなかった。

どんなに、
過去を断ち切ろうとしても彼女のあの表情が忘れられない……

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あの時のエミの涙は一体何を意味していたのだろうか……

自分の額をエミがしたのと同じように指先で触れてみた。

なんだろうか、何か懐かしい感覚が沸き起こった。

それは、もう決して触れることの出来ない、
ぼくの気持ちを激しく揺さぶりをかけるもの……

ぼくの額に触れた彼女の指先の感触が
辛く切ない古い記憶を呼び起こした。

姉がいなくなる少し前だったと思う……

ぼくの額に優しくキスをした姉は寂しそうに微笑んだのだ……

まさか……

彼女がかつてのぼくの姉だなんてあり得ようはない……

ただ……

隣で寝息を立てるエミの姿が、
ぼくを一層落ち着かない気持ちにさせた……


裏路地小劇場 魔法少女 第四幕 完
次回 第五幕へ続く……








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