裏路地小劇場 魔法少女 第六幕


それが何を意味していようが、そこに時間が存在し、何かが起き、僅かながらに『ヒトトキ』を感じるものである・・・

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透き通った水色に覆われた風が彼女の乱れた髪をなびかせ、
ほんの一時の間だが緊張を和ませた……

これがぼくらのお使いの目的なのだろうか?

だとすると何故ぼくまでが、
エミと一緒に、ここに来なければ成らなかったのだろうか……

もちろん飲み代と引き換えにして自分の意志でここに来た事ではあるが……

そもそも、
彼女と、この緑の花牧場には一体どのような関係があるのだろう?

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ぼくの否定すべきあり得ようもない妄想に比べれば、
いくらでもこの状況を説明できるはずだ。

しかし、
ぼくの頭には他の事を考える余裕がなかったのだ。

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牧場の入り口近くの木陰でしばらく休んでいるとエミが目を覚ました。

ぼく自身どうやっても気持ちの整理がつかなかったが、
エミに聞かずにはいられなかった。

「あれは、きみのことじゃないのか?」

看板に書かれた文字を見ながら問いかけたが、
心の中では意識的に否定し続けるセリフだった……

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エミは小さく首を傾げると、
おぼつかない足取りで牧場の敷地の中に入り込んだ。

草が膝下をくすぐるように風の音色に混じって、ぼくら二人を招きいれた……

少し進んで立ち止ると、
遠くの方で小さな女の子が草原で座っているのを見つけた。

ここで暮らしている娘かもしれないし、

もしかしたら、この娘が、えみ、なのかも知れない……

二人の視線が触れあうと、
女の子は満面の笑みを浮かべて彼女を迎えた。

「だーれ?」いかにも幼い女の子らしい、
間延びしたような可愛らしい問いかけだった。

その瞬間、エミは女の子の表情に何かを感じ取ったかの様に
口元を手のひらで覆い、瞳を潤ませたのだ……

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「パパとママは?」一時の間を置いて、
しゃがみ込みながらエミがそっと尋ねた。

「おうちなのよ、だからここであそんでるの……」

「パパの名前は……」
最後の方は良く聞き取れなかったが、女の子はエミに

「何でパパのなまえしってるの?お姉ちゃんはえみちゃんなの?」
と訪ねると、

エミの顔を不思議そうに見つめ、そのまま駆けて行ってしまった。

この二人の会話には一体どんな意味があるのだろうか……

女の子の背中を見送りながらエミに近寄るとそっと尋ねた。
「どうする?」

彼女は思いつめたように俯き、
手首のリストバンドを見つめると牧場に背を向けて歩き始めた。

まるで、
その存在が幻であったかの様に彼女の後ろ姿が霞んで見えた……

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その後、ぼくらは一言も交わすことなくそれぞれが帰路についた。

本当のところはどうなのだろう、
あの牧場はエミが帰るべき場所なのだろうか?

答えの見えない疑問が止めどなく沸き上がってくるが、
これ以上の深入りは出来ないと考えた。

恐らく……

次にすれ違うときはただの他人らしく、
お互い言葉を交わすことも無いだろう……

そんな思いを漠然と感じていた……


裏路地小劇場 魔法少女 第六幕 完
次回 第七幕へつづく……




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